買取業者を家に呼んでテレビを運び出してもらったんだけど、
業者が間違えて、ハードディスク内のデータを全部消してしまった!
8年間にわたる家族の思い出がつまっていたのに・・・
いくら賠償してもらえるの?!
同様の事例で、慰謝料として655万円を請求した方がいました。
残念ながら、裁判所は、36万円の賠償しか認めませんでした。
なぜそうなったのか、ご説明します。
要するにこういうコト
業者の不法行為により、かけがえのない家族のデータが失われたのですから、Aさんは、業者に対して、慰謝料を請求できます(民法710条)。
もっとも、裁判所は、『バックアップをしていない』という被害者の落ち度を重視し、過失相殺(かしつそうさい)を行いました(民法722条2項)。
その結果、賠償される額は大きく減ってしまいました。
慰謝料請求(民法710条)
法律は、不法行為により財産が失われた場合、財産の価格に加えて慰謝料を請求することを認めています。
例えば、裁判所は、10年間愛し続けていた飼犬が医療ミスによって死亡してしまったケースにおいて、犬の価格に慰謝料30万円を加えた金額の賠償請求を認めました(東京地判H16.5.10参照)。
ペットのような生き物であろうと、ルンバのような機械であろうと、所有者にとってかけがえのないものが失われたのであれば、慰謝料を請求できます。
Aさんは、家族の思い出がつまったかけがえのないハードディスクを失い、ひどく傷ついているのですから、業者に対し、慰謝料を請求することができます。
過失相殺(民法722条2項)
被害者にも落ち度(過失)がある場合、それによって損害の一部が生じたと考えられますから、相手が賠償すべき額は減らされます。
これを過失相殺(かしつそうさい)といいます。
ペットと異なり、データはいくらでもバックアップをとることができます。
Aさんがバックアップさえとっていれば、業者がハードディスクを壊したとしても、大切なデータは失われませんでした。
東京地判平成16年5月10日
裁判所も、同じようなことを述べ、以下のとおり、過失相殺を行いました。その結果、業者が賠償すべき額は20%減りました。
① 業者は本来、慰謝料として45万円を賠償しなければならない。
② しかし、被害者には、バックアップをしていなかった過失がある。本件データはとても重要なもので、バックアップをする必要性が高かったのであるから、被害者の過失は大きい。
③ なので、業者に過失が多少あったとしても、業者が賠償する金額は、36万円(20%OFF)である。
今度からバックアップはきちんととるようにします。
裁判所って、あまり慰謝料額を高く認めてくれないんですね・・・